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糀作りの今昔。糀の最盛期にて思うこと。

糀蓋20200203

久々に糀蓋を併用しています。糀を盛る、小さめの箱のことを「蓋」と呼びます。

今季も糀の注文が一時に集中する傾向があり、増産する決断をして、この昔ながらの道具を引っ張り出してきました。(2月後半はなぜか糀の注文が薄いので、狙い目です)

当工房では、糀のクオリティと作業性や衛生面を考え、通常、大きな糀箱に布を敷いて糀を盛っています。布は毎回洗ってすぐ乾くので、便利です。

その大きな箱と小さな蓋とを併用するには少々コツがいりますが、小さな蓋に盛る量や置き方など調節してやれば、蓋と箱の併用は可能です。これは酒蔵での数多い経験が、自信を与えてくれています。起りうることの予測が何通りかできるからです。

私が求める完熟の糀作りにとって必要なのは、仕舞い仕事以降一定時間の湿度保持です。室の体積と蒸米引き込み量のバランスをとってやると無理に加湿しなくても必要な湿度を確保できます。ただし、蓋に糀を直接盛ると蓋が汚れますし、湿度高い室の状態では雑菌の温床となるゆえ、出糀ごとに蓋を洗い熱湯などで多少なりとも滅菌する必要があリます。

綺麗な味の甘酒を実現するに必要なのは、糀のクオリティと衛生です。

昔ながらの糀屋さんは出糀ごとに蓋を洗うことはしませんので、糀にコウジカビ以外のカビや雑菌も多く共存している場合があります。そういう糀をビニール袋に入れて保管すると、赤や緑など様々なカビが生えてくることがありますね。そういう糀は紙袋で保管したり、冬であれば寒いところに薄く晒しておく方が、乾燥し、日持ちします。

昔ながらの糀が悪いのではなく、昔ながらの道具と方法と感覚で作ったものと現代の包装とは相入れないところがある、ということです。むしろ、それほど衛生的とは言えない環境で作られた糀で作ったお味噌の方が、その場所ならではの風味を醸し出すことがあるのかもしれないですし、今の時代の綺麗な糀とどっちが優れているというわけでもありません。

ハッピー太郎醸造所の糀は、現代の人たちが使いたくなる品質の糀でありながらも、旨いものを醸す深みを持たせるべく、「完熟の糀」、という指標を掲げております。完熟とは何かを思考し、毎年進化させていっています。その変遷についてもいつかお話ししましょう。

昔の道具を使うと、変わっていくもの、変わらず守るもの。「不易流行」ということについて思いを馳せることになりますね。

(了)