発酵食品工房 ハッピー太郎醸造所 です。
当工房のメインの製品である糀、少しお話しして見ましょう。
こちらが本日、先ほど出来上がった自然農法米「滋賀旭」の米糀です。綺麗にふっくら仕上がりました。出来上がったものをバラバラにほぐした状態ですね。
ぎゅっと握ってみて押し返すような弾力があり、ふっくらと仕上がるのが手触りの目標です。味は完熟を目指し、栗のような香味がします。そして食べて見ての歯触りの感触を大事にしていて、その感触で菌が米の内部へ侵入しているかどうか、確認するようにしています。
よくインターネットなどで、糀は48時間ほどで出来上がる、と書かれていたりしますが、それは目安にすぎません。時間を参考にはしますが、それにはめ込むような糀作りは私のスタイルではなく、あくまで糀の生育に合わせ焦らず作りますし、途中の攪拌などの仕事も適切なタイミングで行うことを心がけます。力強く根を張り、充実した実をつけるといったイメージですね。今回は52時間かかりました。
稲は播種から半年かかって種子をつけますが、糀は圧倒的に早くできます。48時間ほどで人間が使うに十分なものが出来上がる。たかだか2~3日間ですからその中の1時間が濃い内容です。特に後半の1時間1時間がとてもドラマティックな変化を見せます。そしてラスト2~3時間は、酵素力の強さにおいて決定的に大切な時間で、ここで焦ってしまわないように。甘酒や味噌が力強さに欠けるものになってしまいます。
さて、その生育の過程でいろんな仕事・対応をするのですが、何が基準なのか。もちろん、過去の成功体験も欠かせませんが、記憶というのは良い方にも悪い方にも転びます。むしろ、糀の「今」を感じ取ってやること。人間側の都合を当てはめないこと。ここが肝要です。五感を駆使し自然体で付き合う。誘われるように仕事してやります。
私も人間ですから、様々なことに心惑わされます。でも、室に入り糀の香りを嗅いだ瞬間、心に平穏が訪れます。自然と腹式呼吸となり、体の力が抜けます。そんなことも私が糀作りに魅了されている理由の一つかもしれません。(了)